書籍、「鉄道車輛ガイド Vol.33 西武の黄色い3扉車」を紹介します。
この本は以下のような方にオススメします。
- 西武鉄道の電車に興味がある20代以上の方
- 過去の西武電車、とりわけ3ドアの電車の細かい形態差を知りたい方
- 「ブラックフェイスの憎いやつ」と聞いて懐かしくなる方
本書では、西武線の黄色い3ドア電車(401・701・801・501・101・3000系)について、100ページ余りの紙面を用いて詳説されています。
本書を手にすることで、黄色い西武電車の知られざる歴史を、今一度知ることになるでしょう。
- 当記事では、鉄道車輛ガイド Vol.33 西武の黄色い3扉車の一部引用(内容紹介)を交えて、当記事オリジナルの画像を掲載しながらレビューを掲載してまいります。
※当記事は、著作権法第32条における「引用」のルールを参考に、これを順守した上で作成しました。
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【Kindle版レビュー】鉄道車輛ガイド Vol.33 西武の黄色い3扉車
冒頭では「カラーグラフ」と題して、写真を十数枚に渡って掲載しており、時代を追うように電車の写真の紹介があります。
系列ごとの紹介では半ページ程度の概略があり、その後のクハ・モハなどの形式を紹介するページでは、1次車・2次車、といった細かい区分けで更に踏み込んだ紹介がされます。
紹介の順番については、「701・801・401・501・101・3000」の順となっており、こだわりを感じた次第です。
巻末には、保存車両や地方私鉄へ譲渡後の姿がカラーページで、多くの写真と共に14ページに渡って紹介されています。
701系の6両編成化にともなう「編成組替表」も資料として紹介されており、組成のビジュアルを用いながら車両の組替を表現しています。
高性能車が生まれるまでの3扉車の系譜
1950年代、初代501系の成り立ちから解説が始まります。
他の大手私鉄が相次いで高性能車を投入する中、西武鉄道では旧態依然のまま吊り掛け電車を製造しており、この状況からの脱却について解説がされます。
701系の登場から101系の登場に至るまで、デザイン面や足回りの進化を「西武新時代」と表現され、その後の新101系、3000系への布石となり増備が続く様子が紹介されます。
直近の話題でもある多摩湖線の9000系投入についても触れており、以下のように記載されています。
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ちなみに9000系は101系初期車の4扉車化を目的として登場した形式で、(中略)101系初期車の血統を持つ車両が新101系を追いやるという、何とも皮肉な交代劇となった。
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引用元:鉄道車輌ガイド Vol.33 西武の黄色い3扉車 P22
編集:宮下洋一氏 発行所: 株式会社ネコ・パブリッシング
試作冷房車の冷房装置更新改造
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同グループの内、175・177編成は1987(昭和62)年から翌年にかけて冷房装置の更新が行われ、他車と同じ集中式に交換された。
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引用元:鉄道車輌ガイド Vol.33 西武の黄色い3扉車 P58
編集:宮下洋一氏 発行所: 株式会社ネコ・パブリッシング
101系初期車に見られた、角形ベンチレーターを載せた2編成についても紹介がありました。
175Fについては、本線で活躍する最晩年の2004年8月に池袋線から新宿線へ転属となり、191Fと共に2004年12月まで運行された経歴があります。
試作冷房車の生き残りである175Fと177Fですが、177Fは早々に廃車となりました。
(本書の巻末に廃車時期が記載されています)
そのため、長いこと唯一の形態となった175F。
角形のベンチレーターを載せた低運転台車の姿は、やはり特徴的な見た目でした。
101系低運転台車の本線引退へ
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西武秩父線開業に合わせて華々しく登場した101系初期車であるが、登場から30年を経て代替の時期が訪れていた。
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引用元:鉄道車輌ガイド Vol.33 西武の黄色い3扉車 P65
編集:宮下洋一氏 発行所: 株式会社ネコ・パブリッシング
101系低運車は2004年12月に本線から引退となりましたが、引退目前でツートンカラーを復刻しています。
池袋線の193Fと197Fが復刻塗装車となり、休日は1001電車「快速急行西武秩父行き」として走行する姿が見られました。
本書内でも紹介されていますが、妻面のベージュについて私も手持ちの記録から1枚紹介します。
2004年の193Fと197Fのツートン塗り替えは玉川上水で実施されています。
この部分の塗装は転落防止幌が干渉するため、塗装が出来なかったように見受けられます。
2005年、ワンマン新101系の特別修繕について
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101系10次車のうち257~261編成を対象にワンマン化改造が施工された。(中略)2005(平成17)年に特別修繕工事が行われ、ここで外観上に大きな変化がもたらされた。
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引用元:鉄道車輌ガイド Vol.33 西武の黄色い3扉車 P80
編集:宮下洋一氏 発行所: 株式会社ネコ・パブリッシング
多摩湖線のワンマン運転は、当初、萩山~国分寺間のみで実施されていました。
これに対応するワンマン対応編成は257F・259F・261F・225Fの4本でした。
当時の編成配置については、以下の記事もご参照ください。
2007/10/23 西武多摩湖線の225Fその1【新宿線系統最後の101系低運車】 | Rail Log
西武多摩湖線の225Fその1【新宿線系統最後の101系低運車】萩山付近での西武101系225F萩山留置線を出庫する225F当時の多摩湖線は、多摩湖北線との直通は一部時間帯に限られており基本的には、国分寺~萩山と、西武遊園地~小平の運行となっており分断されていました。(一部の運行は直通有り)写真は電留線から萩山駅に据え付けられて国分寺行きとなる直前の姿となります。萩山駅前の歩道橋より、各所を眺めま
2005年3月には、特別修繕工事を終えた261Fがはじめて姿を現します。
これまでにない新たな装いは、非常に目新しく映ったのを覚えています。
こちらも、特別修繕工事施行後の記録を別記事で詳説しています。
2020/11/9 新101系261F(伊豆箱根カラー)横瀬へ廃車回送 | Rail Log
多摩湖線で活躍するワンマン新101系261F(伊豆箱根カラー)が、2020年11月9日に横瀬へ回送されました。横瀬駅到着後には解体線に向かう姿も見られ、廃車になるものと見られます。ワンマン新101系が横瀬へ回送されるのは2020年2月の257Fに引き続き261Fが2本目となりました。新101系261F(伊豆箱根カラー)横瀬へ廃車回送撮影地:西武池袋線 東吾野→吾野ワンマン新101系 261F(伊豆箱根カラー)横瀬行きの回送に先立って、前日
2010年からは多摩川線に残る101系低運車を置き換えるべく、新101系に追加でワンマン化工事が施工されました。
追加でワンマン化された新101系は241F・245F・247F・249F・251F・253Fの6本となっており、こちらのワンマン化の年月もP98に「編成・車歴表」として一覧で紹介されています。
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P96から始まる「編成・車歴表」は、非常に濃い内容でした。
新101系ワンマン車の近年の塗装の変更履歴も網羅されており、資料として重宝します。
ネットで探すのも手間ですし、こういった資料が手元に一冊あると便利ですね。
3000系の活躍について
3000系の活躍は一番最後の紹介となりますが4ページに渡って掲載されています。
他の形式に比べ、ページ数は少なめとなっています。
大がかりな改造や転配も無かったため、特筆される点が少ないのでしょう。
しかしながら、3000系の近年の動きを振り返れば、いくつかトピックスとなるような出来事が思い浮かびます。
- 銀河鉄道999号やL-trainに見られる特別塗装車
- 3005Fと3007Fの8連→6連化による国分寺線運用
- 近江鉄道譲渡と、それに伴う編成短縮と方向転換
比較的、地味な存在とも言えた3000系ですが、晩年は話題に事欠きませんでした。
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”3000系は制御器の関係などから、他系列との併結は出来ず単独での運用が設定された。
(中略)
2014(平成26)年をもって全車引退。ここに西武鉄道の3扉車の伝統は本線系統からは消滅した。 ”
引用元:鉄道車輌ガイド Vol.33 西武の黄色い3扉車 P92
編集:宮下洋一氏 発行所: 株式会社ネコ・パブリッシング
2014年のクリスマスイブには、最後まで残った3011Fが横瀬へ廃車回送され、3000系は廃形式となりました。
巻末には保存車両や、地方私鉄譲渡の話題【部品単位での譲渡も紹介】
巻末には保存車両と地方私鉄へ譲渡後の姿が紹介されています。
P107に記載のある伊豆箱根鉄道1100系の雨どいについては、あたらしい発見でした。
ぜひ紙面でお確かめいただければと思います。
部品単位での譲渡も紹介
1ページで紹介されていますが、この着眼点は新鮮でした。
地方鉄道の、特定の車両に西武電車の部品が生きているのかと思うと不思議です。
こちらも、一見の価値はあることでしょう。
「鉄道車輛ガイド Vol.33 西武の黄色い3扉車」をすすめる理由
購入すると何が分かるのか
西武鉄道の3扉車の歴史を把握することが出来ます。
1960年代から2010年代にかけて、おおよそ50年分の歴史が100ページ余りに凝縮されています。
私自身は現在30代半ばで、西武鉄道ファン歴は約20数年ですが、それでも新しい発見がありました。
20代以上の西武電車を趣味とする方であれば、買って損はないと感じました。
気になるところ
- 一部ではありますが、駅名や車両番号の記載に誤記がありました。
- 本体の値段が、比較的高めです。
鉄道車輛ガイドvol.25の赤電の本では税抜き1800円であったのが、今回の黄色い3ドアでは税抜き2500円となりました。
※内容の濃さを考えると、一定の納得はできるところです。
簡潔なまとめとしては、買いです。
ここまで当記事を読み進めて頂いたあなたであれば、本書は相応以上の価値を持つ内容と言えることでしょう。
Kindle版「鉄道車輛ガイド Vol.33 西武の黄色い3扉車」について
今回、はじめて鉄道雑誌を電子書籍の「Kindle」で購入してみました。
Kindle版で良かった点
- 在庫切れを心配しなくてもよい
- 実店舗に足を運んだり、実物の到着を待たなくてもよい
- 10インチ程度のタブレットで読みやすく表示できる
- 取り回しが便利、わざわざ現物を手元に用意せずに読むことが出来る
amazonの商品ページには、「※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。」という記載があります。
Surface Go(10インチディスプレイ)では問題なく読み進めることが出来ました。
Kindle版で気になる点
- 注意書きの通り、スマホでは読みづらい(読めなくはない)
- 目的のページを探す際、手間がかかる
(Kindle標準の本文検索やマーカー機能は使用できない)
現物の本はページをめくって探せば手早いものですが、Kindleではその部分の取り回しが不便に感じました。
逆に、それさえ気にならなければ、Kindle版を選択するメリットの方が上回ると感じます。
私は、今後も鉄道雑誌はKindleで読もうと思いました。
当ブログでは以下の書籍もレビューしています。
ぜひ合わせてご覧ください。
【書籍レビュー】季刊Jトレイン73号【E31形設計開発と運転の舞台裏】 | Rail Log
季刊Jトレイン73号(ジェイトレイン2019年4月号)を紹介します。E31形電気機関車の記事が20ページに渡り特集されており、「設計開発と運転の舞台裏」と称するように、西武時代の逸話が多く掲載されています。20年以上に渡り西武鉄道を趣味の対象としてきた私が、このブログをご覧のあなたに間違いなくオススメできる一冊です。E31形の設計から運転の裏話に至るまで、多くのエピソードが紹介されており、西武線におけるE31形現役時代を知る方にとっては、当時の記
Kindleで鉄道雑誌を読むなら知っておきたいタブレット・PC
10インチ以上のディスプレイサイズの端末をおススメします。
(スマホサイズでも読めなくはないですが、正直長時間だと疲れます)