西武の機関車E31形設計開発と運転の舞台裏を読む

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季刊Jトレイン73号(ジェイトレイン2019年4月号)を紹介します。
E31形電気機関車の記事が20ページに渡り特集されており、「設計開発と運転の舞台裏」と称するように、西武時代の逸話が多く掲載されています。

20年以上に渡り西武鉄道を趣味の対象としてきた私が、このブログをご覧のあなたに間違いなくオススメできる一冊です。

E31形の設計から運転の裏話に至るまで、多くのエピソードが紹介されており、西武線におけるE31形現役時代を知る方にとっては、当時の記憶と答え合わせができる内容となっています。
私も、E31形引退までの数年間は機会があればカメラを手にして撮影を行っていましたが、内情を知ることは難しかったことを、ついつい思い出してしまいます。

  • 当記事では、季刊Jトレイン73号の一部引用(内容紹介)を交えて、オリジナルの画像を掲載しながらレビューを掲載してまいります。
  • 記事の一番最後にはE31形の活躍を紹介した記事をまとめて掲載しています。
    ブックマーク代わりにご活用ください。

さよならイベントでのE31形(2010/3/28)


※当記事は、著作権法第32条における「引用」のルールを参考に、これを順守した上で作成しました。


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【書籍レビュー】季刊Jトレイン73号【E31形設計開発と運転の舞台裏】

西武鉄道OB3名の方をお招きし、E31形電気機関車の誕生前(旧型電機置換の検討段階)から、実務となる機関車の運転、大井川鐵道譲渡について語られる内容となっています。
誌面はインタビュー形式となっており、聞き手となるJ-train編集サイドが、西武鉄道OBのお三方に当時の話を伺う構成となっています。

E31形を運転した経験談からは、沿線から撮影しているだけでは気付くことの出来ない苦労も赤裸々に語られています。

旧型電機の置き換え、E31形新造について

横瀬に並ぶ旧型電機とE851形(2020/11/8)
D16にけん引されるE52とE43(2010/10/3)
E71改めED10 2と並ぶE31形(2007/10/6)

1980年代、E851形がセメント貨物列車をけん引する傍ら、小口の貨物輸送を行う旧型電気機関車の老朽化が進行していました。

E31形は、これら旧型電機の置換を目的に1986年から1987年にかけて4機が自社の所沢車両工場で製造されていますが、設計の前段階での話が本誌冒頭で紹介されています。
また、E31形誕生に至るまでは、いくつかの検討候補があったようです。

    ” 機関車を新造する、電車で代用する、中古の機関車を譲り受ける、旧型の機関車を徹底的に更新修繕する…など(後略) ”

    引用元:J-train(山本和彦・市原純) 設計開発と運転の舞台裏 西武E31形
    j train (ジェイ トレイン) 2019年4月号  P93  イカロス出版


誌面では、旧型電機の置換についてはこのような選択肢があったと記載があります。
2008年に登場した263Fは、普段は多摩湖線での営業運行に就き、甲種輸送の機会には牽引用の電車として活躍します。
この運用方法は、当時は今までにない斬新な運用方法であったため、非常に感心したものでした。
しかし、時を遡り30年ほど前にも「電車で代用する」という案があったことは、意外な感覚を覚える方も多いのではないでしょうか。

  • 複数候補の中から「機関車を新造する」ことが選ばれて、E31形が竣工しました。
    反面、2010年には「電車で代用する」263Fの登場によって、E31形は引退することになります。


なお、ほかの選択肢であった「中古の機関車」については、具体的な形式名にも触れており
旧国鉄のとある機関車が候補であったことも記されています。

E31形の塗装について

「さよなら」のHMを掲げたE851形とE31形(2012/9/30)
両者の塗装は、赤とクリームを反転したかのよう(2007/10/6)
E851形の側面窓は丸、対するE31形は四角(2007/10/6)

興味深い一節は、塗装の検討段階の話ではないでしょうか。
E31形は、先輩格でもあるE851形の塗装を反転させたような意匠となっています。
1980年代後半から1990年代にかけての10年ほどは、現役の期間が重なる両機ですが、塗料については以下のように語られています。

    ” ー塗料はE851と同じですか。
    増渕 色はE851と同じです。共通化した色をメーカー番号指定で発注していました。 ”

    引用元:J-train(山本和彦・市原純) 設計開発と運転の舞台裏 西武E31形
    j train (ジェイ トレイン) 2019年4月号  P96  イカロス出版

一目で見ると、E851形の方がクリームが濃いような印象はありませんでしょうか。
しかし、それは面積の大小によって受ける印象だったのかもしれません。
西武電車の黄色が変遷していくように、機関車のクリームの色味も時代ごとの色味があったように感じます。

    ” ただE31形は寸胴なので、引き締める意味で裾に黒を入れています。 ”

    引用元:J-train(山本和彦・市原純) 設計開発と運転の舞台裏 西武E31形
    j train (ジェイ トレイン) 2019年4月号  P96  イカロス出版

気付かれにくい裾の部分の黒塗装についても触れられています。
本誌97ページにはE44と連結したE33の写真が掲載されていますが、E31形の車高の差異が容易に判別できる写真となっています。
「引き締める」という文中の言葉と写真を見比べてみると、なるほど、非常に説得力があることに気付かされます。

E31形の工事列車(工臨)について

玉川上水を目指すトム7工臨1862レ(2006/12/26)
保谷工臨、復路の出発待ち(2006/11/7)
これが最後となった小手指工臨(2008/6/19)

E31形を語る上で外すことの出来ない工事列車についても、4ページにわたって触れられています。
最晩年(2007~2008年頃)におけるE31形の工臨では、現場でのバラマキ作業は無かったと記憶していますが、本誌ではE31形のバラマキ作業についても記載されています。
(”バラマキ作業”の作業内容についても、詳細は本誌内で解説されています)

    ” 電流計とモータを音を聞きながら、カチカチとノッチを切り替えて速度を保つようにしていました。 ”

    引用元:J-train(山本和彦・市原純) 設計開発と運転の舞台裏 西武E31形
    j train (ジェイ トレイン) 2019年4月号  P100  イカロス出版
    ” 正丸の下り勾配などは貨車が押してくるので、機関車の単弁は抜いて自弁で編成にブレーキを掛け、貨車のブレーキだけでおりてくるような恰好でした。 ”

    引用元:J-train(山本和彦・市原純) 設計開発と運転の舞台裏 西武E31形
    j train (ジェイ トレイン) 2019年4月号  P100  イカロス出版


保線の現場、とりわけバラスト散布時の苦労が語られます。
他、工事列車の最高速度や、ノッチとブレーキの扱い、西武秩父線の勾配区間における運転のコツが紹介されています。
この項については非常に読みごたえがあり、当時の裏話を聞いているかのような気持ちになれます。

P105には内部資料として、パンタグラフの取り扱いについても掲載されています。
当ブログでも、E31形のパンタの上げ方については取り上げることも多く、「◇(上げ)」「_(下げ)」などで表記しているところです。
本誌に掲載されている資料は、図を用いてビジュアルで説明されるため、当時の走行シーンを知らなくても理解ができる構成となっています。
同時に、何が正当なのかを明示してくれる簡潔な資料ともいえるでしょう。

E31形の甲種輸送について

上信電鉄向けの甲種輸送(2005/12/15)
8連2055F甲種では重連牽引(2008/9/15)
6連2047F甲種ではPP牽引(2008/3/25)

E31形のもうひとつの主な役割として、甲種輸送(電車)の牽引役が挙げられます。
晩年では新車30000系の甲種輸送や新2000系のリニューアル工事に伴う甲種輸送で活躍が見られました。
伊豆箱根鉄道や近江鉄道などに向けた各種譲渡車についてもE31形が牽引しています。
譲渡の際、必要な場合には方向転換も実施され、これにもE31形が使用されていました。

    ” 甲種は電車編成の前後にE31形を付けてプッシュプルの形を取りますが、うしろのE31形は緩急車がわりで、牽くのは先頭だけです。 ”

    引用元:J-train(山本和彦・市原純) 設計開発と運転の舞台裏 西武E31形
    j train (ジェイ トレイン) 2019年4月号  P102  イカロス出版

晩年では、新秋津からの車両搬入は常々「重連」での運転でしたが、電車の前後に機関車を連結するプッシュプル(PP)編成が基本だったようです。
新秋津構内での入れ換えや、PPを組成する意味合いを考えると、小手指までの輸送は重連牽引が最適解であるように感じます。

    ” 甲種で10両編成を牽引する際は重連にして総括運転をしていましたけどね。そうしないと重くて持ってこられません。 ”

    引用元:J-train(山本和彦・市原純) 設計開発と運転の舞台裏 西武E31形
    j train (ジェイ トレイン) 2019年4月号  P100  イカロス出版

ハンドルを握った経験から語られる内容には、流石に説得力のようなものが宿ります。ついつい誌面に引き込まれてしまいます。

西武での引退、大井川鐵道への譲渡について

大盛況だったE31形さよならイベント(2010/3/28)
大井川鐵道への陸送は横瀬から3日の道のり(2010/9/10)
再デビューHMは、7年前の意匠を模した粋な計らい(2017/10/15)

E31形の西武鉄道引退から2020年で10年が経過しました。
2010年3月には引退イベントが横瀬車両基地にて行われており、多くの撮影者でにぎわう様子が見られました。
同年9月には横瀬車両基地をトラックによる陸送で出発、3日をかけて静岡の新金谷まで輸送されています。
大井川鐵道における再デビューは2017年になってからのことで、これは記憶に新しい出来事でもあります。



    ” いずれ地方鉄道へ売却することも考えていたようで、車体の幅や高さを地方鉄道の規格に合わせています。 ”

    引用元:J-train(山本和彦・市原純) 設計開発と運転の舞台裏 西武E31形
    j train (ジェイ トレイン) 2019年4月号  P106  イカロス出版

新造段階から地方鉄道への売却をにらんでいたというのは、多数の実績がある西武鉄道らしさを感じるエピソードではないでしょうか。

当初は、大井川鐵道へ譲渡の予定はなかったようですが、縁あって活躍を続けるE31形。
SL列車の補機だけに留まらず、ELかわね路号や急行列車として先頭に立つ機会も増えています。



2020/9/12  大井川鐵道ELかわね路号【E31形西武EL重連牽引】 | Rail Log

大井川鐵道にて、SLかわね路号のEL(電気機関車)代走が発生しています。2020年9月では、5、6、12、19、20、21、28日の各日において「かわね路号」をELが牽引する予定となっております。(2020/9/12現在)大井川鐵道ELかわね路号【E31形西武EL重連牽引】往路:E31形牽引の千頭行きのELかわね路号(大井川第四橋梁)E33-E32重連が牽引する「ELかわね路号」往路の、新金谷発千頭行き列車を、大井川第四橋梁より眺めます。

まとめ:季刊Jトレイン73号【E31形設計開発と運転の舞台裏】

数ある鉄道会社の中でも、地方鉄道譲渡の編成が数多く活躍する西武鉄道の車両たち。
その中でも、E31形は4両全てが健在であることが特筆されます。
本誌の特集は、そのE31形の西武時代の半生にクローズアップした内容となっています。
設計段階から、実務として運転にかかわった生の体験談まで、知られざるE31形の姿が紹介されています。
当ブログ記事を、ここまでご覧の方であれば少なからず刺さる内容といえるでしょう。

  • 今も非常に人気の高いE31形。
    同機の活躍や、その裏舞台、詳しいエピソードが数多く収録されています。
    その中には、本誌でしか見ることのできないであろう内部資料が複数掲載されていることも特筆されます。



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