西武鉄道のE31形と貨車であるトム301形が、鉄道模型のNゲージ(実車の1/150サイズ)として、マイクロエース社より製品化されます。
マイクロエース試作品ニュース 西武鉄道(大井川鐵道)E31型、西武鉄道トム301の試作品
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この記事では、製品化されるE31形とトム301形の西武現役時代と大鉄譲渡後の写真を紹介しながら、当時の組成のバリエーションや、個体差が見られる実車の特徴について紹介します。
(購入を迷われている方や、現役当時の姿に興味のある方など、どなたでも楽しめる記事構成としました。)
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E31形の晩年については、おおよそ数千枚を超える写真が手元に残っています。
その記録の中から、可能な限り紹介してまいります。
目次も用意しましたので、興味のある部分から飛ばし読みも出来ます。
西武鉄道のE31形電気機関車について
E31形は、1986年から1987年にかけて所沢車両工場にて製造された、西武鉄道の電気機関車です。
E31号機からE34号機の全4機が製造され、保線用の貨物列車(工臨)や、甲種輸送列車では牽引役を務めるなど、2010年まで活躍を続けました。
後継となる263Fの登場や、保線用のモーターカーの進歩、機関士要員の確保が難しくなってきたことなどから、2010年3月には西武鉄道のさよならイベントが実施され、引退することとなります。
同年9月には大井川鐵道へE32号機からE34号機の3機が譲渡され、2021年現在も活躍が続いています。
E31号機については西武線の横瀬車両基地にて静態保存されており、イベント時にはその姿を見ることが出来ます。
西武鉄道から引退して10年以上が経過しましたが、4機すべてが現存するのが特筆される点です。
西武鉄道のトム301形について
西武鉄道トム301型は1929年に登場した無蓋貨車です。
元をたどれば武蔵野鉄道時代に吾野駅の砕石輸送を目的として導入された貨車でしたが、貨物の廃止以降も保線作業用の貨車として2008年6月まで活躍を続けました。
トム301形はトム301~405までの105両が在籍しており、その大半は1996年5月までに廃車になっています。
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トム301形は1996年5月までに105両の内89両が廃車され、2008年まで16両が残存
- 1996年6月以降も活躍を続けたトム301形の車両番号
303
304
305
306
307
308
309
311
312
317
318
319
320
321
322
323
貨車7両セットのトム302は1990年に廃車…?
マイクロエースから製品化される新塗装のトム7両の内、トム302だけが1990年12月に廃車となっています。
(製品化されるトムの番号は308-304-312-317-318-302-306)
トム302を除く他の6両については、2008年の晩年まで活躍を続けています。
マイクロエースの案内文には「換算表記が省略された晩年の姿」と銘打たれており、厳密に言えば時代設定に難のある仕様となってしまう印象です。
黒一色だった塗装も、平成初期頃からはアイボリーをベースにグリーンの帯を巻いた仕様に変更されています。
こちらもトム302が1990年12月の廃車時点で新塗装だったのか否か、という点が興味深いところです。
マイクロエース西武E31形とトム301形の模型で再現できる現役当時の編成
2021年に発売されるE31形とトム301形で再現できる姿は、主に工臨で活躍した最晩年(2005年~2008年頃)の姿と推察されます。
それでは、実車の写真を紹介しながら当時の背景を解説します。
E31形プッシュプルによるトム工臨
2005年頃のE31形とトム301(及びホキ81)は、おおむね横瀬車両基地に留置されるのが常でした。
(それ以外にも複数パターンがありましたが割愛します)
E31の工臨が走行する際は、単日で横瀬から武蔵丘を目指すパターンと、2日かけて横瀬から玉川上水を目指すパターンの2つに大別できます。
※横瀬を出発する際は、いずれも1804レで武蔵丘を目指すこととなります。
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横瀬→武蔵丘
1804レ(横瀬1825頃→武蔵丘)
- 横瀬→玉川上水
1日目夕方:1804レ(横瀬1825頃→武蔵丘)
2日目午前:1802レ(武蔵丘1005頃→所沢)~1851レ(所沢→新所沢)
2日目午後:1862レ(新所沢1355頃→小川)~1863レ(小川→玉川上水)
武蔵丘、もしくは玉川上水に到着した工臨は、夜中の保線作業に備えることとなります。
深夜の保線作業においても、拠点となる駅まではE31形が貨車のけん引役を担っていました。
(最晩年においては、拠点駅から保線箇所まではモーターカーがけん引)
この拠点となる駅は、晩年では以下に紹介する4つの駅に限られており、保線を必要とする区間により行き先が変わりました。
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武蔵丘に到着した深夜工臨の行き先
小手指
保谷
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玉川上水に到着した深夜工臨の行き先
上石神井
新所沢
一部?ファンの間では、この深夜に運転される工臨の行き先を用いて、「小手指工臨」や「上石神井工臨」といった呼び方がされていました。
(当ブログでも頻繁に用いることがあります)
E31形重連によるトム工臨
工臨の組成については、ある程度の規則性はあったものの、多くの不明点もあるのが正直なところです。
以下、推測を多分に含みますがまとめを作成しました。
- 機関車
プッシュプル(貨車の前後に機関車を連結)
1801レや1804レなど、主に池袋線の工臨
(小手指工臨、保谷工臨)
重連
上石神井工臨や新所沢工臨など、主に新宿線の深夜工臨
(1862レなどの新所沢で折り返す列車についてはプッシュプル)
- 貨車
トム7
基本の両数。工臨と言えばトム7両が定番でした。
トム6
構内都合か作業内容によってなのか、トム6の場合も多く見られました。
特に、小手指工臨ではトム6が定番でした。
※保谷工臨もトム6+ホキ3が定番
※上石神井工臨は、トム7・トム6が日によって変更
E31形プッシュプルによるトム試運転
E31形と貨車と言えば試運転も忘れてはいけません。
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横瀬→吾野
1882レ(横瀬1530頃→吾野)
吾野→横瀬
1881レ(吾野1645頃→横瀬)
トム301形とホキ81形は横瀬車両基地で検査を実施していました。
整備を終えた貨車は、横瀬から吾野の1往復で試運転を行います。
こちらもE31形のプッシュプル編成によって運転されています。
検査のタイミングによってなのか、[トム1+ホキ1]や[トム2+ホキ4]などの組成も見られました。
組成については時代ごとで多岐に渡るものと思いますが、試運転らしい組成と言えば貨車1両のこの姿と言えるでしょう。
西武E31形とトム301形の細かい個体差の紹介
それでは、実車の特徴について紹介してまいります。
模型では、なかなか表現が難しいものも含まれますが、実車の特徴ということでご承知いただければと思います。
トム301形の車号(番号)表記について
2005年頃の晩年においては、3種類の車号表記が混在していました。
貨車の表記については資料も少ないところですが、手元の写真を元に分かる範囲で紹介いたします。
社紋+トム+番号
最後まで社紋付きで残ったのはトム306だったと記憶しています。
表記の変更が行われた詳細な時期は把握しておりませんが、この写真の3カ月後には数字のみの表記に書き換わっていることを確認しています。
2007年3月下旬、数字のみの表記に改められたトム306と連結を行うE34。
トムの足回りの状態からして検査直後と見受けられます。
トム+番号
非常に見づらいですが、社紋なしのトム308号車についても紹介します。
社紋なしのトム+番号表記も、こちらのトム308が最後の一両だったと記憶しています。
右側には先に紹介したトム306の姿も見えています。
トム308については、2006年8月の検査時に番号のみの表記に改められています。
晩年まで活躍を続けたトム308でしたが、2008年10月付で廃車されるグループより一足早い2008/3/7に廃車されています。
番号
多く見られた表記のパターンが、こちらに紹介する番号のみの姿です。
もっとも、2007年頃にかけては上に紹介した通り、トムの表記が「番号のみ」に書き換えられている最中だったため、2000年前後や1990年代については、その限りではなかった可能性もあります。
こちらでは、番号を判別できるトム301形の写真を紹介します。
E31形の乗務員扉脇のステップ塗装について
側面乗務員扉直後、4段あるステップの内、上から2つ目の塗装に差異があります。
E31号機からE33号機はクリーム塗装であるのに対して、E34では赤色に塗装されています。
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E31 E32 E33
クリーム
- E34
赤
このステップの赤塗装については、 大井川鐵道譲渡後も見た目での特徴となっています。
E31形の排障器(スカート・スノープロウ)の夏用・冬用の差異について
前面の排障器(スノープロウ)は、季節によって仕様が異なりました。
※便宜的に夏用・冬用と呼称します。
分かりやすい見分け方は、真正面から見た時の幅の差異です。
マイクロエース社の試作品を見る限りでは、冬用の姿で製品化が行われるようです。
冬用については、裏側にカエシが付いたような見立てとなり、幅が広くなるのが特徴です。
定かではありませんが、カエシの部分にあたる冬用パーツは、夏用のスカートに追加で脱着できるようにも見て取れます。
晩年に限っては、夏用・冬用が混在した姿での運用入りを見ることはありませんでした。
唯一、さよならイベントの際にE33号機が夏用スカートで展示されており、これが実物同士で比較できた最後の機会でありました。
E31形の側面飾り帯(ヒゲ)の長さについて
個体ごとに側面に回る飾り帯(ヒゲ)の長さが異なります。
しかし、その差異は僅かなもので、注視してようやく判別が出来る程度です。
- E31…飾り帯(帯の太い部分)が短い
- E32…飾り帯(帯の太い部分)が長い
- E33…飾り帯(帯の太い部分)が長い
- E34…飾り帯(帯の太い部分)が短い
工臨での運転を終える最晩年(2008年下半期以降)では、重単はE31-E34のペアで動くことも多く、ヒゲの長さがそろっていることも多い印象でした。
三重連の運転時では、E32号機のヒゲの長さが際立っていたことも特筆されます。
こちらは横瀬に入庫するE32号機と、E34号機。
(左に映るE31形は、先に紹介の通り、乗務員扉脇の2段目ステップの赤塗装で特定が可能です。)
※蛇足ながら、このヒゲの長さは「雨どい(庇)の排水汚れ」で見間違える時がありますので注意が必要です。
E31形の乗務員扉直下の手すり白色塗装について
乗務員扉直下に設けられた手すりには白色の塗装が施されており、見た目におけるアクセントにもなっています。
そして、この白色塗装にも差異がありました。
晩年に限ると、E33号機を除く3機が「L字状」の塗装であったのに対して、E33号機のみが「I字状」の一直線の塗装となっています。
しかし、いくつかの書籍や登場から間もないころの写真を拝見するに、当初は全てのE31形がL字状の塗装ではなくI字状の塗装だったようです。
上に紹介したE31号機とE32号機は、2003年初頭の段階で塗装が混在しています。
(その後、E32号機は2004年にはL字状の塗装に改められています。)
このことからも、E33号機の手すりが「I字状」の塗装であるという特徴は、最晩年のみに適用できる見分け方であることが分かります。
登場当初から2000年代前半では、「I字状」が通常仕様の姿となります。
E33号機についてはさよならベントは勿論のこと、陸送まで「I字状」の塗装を維持していました。
しかし、 大井川鐵道入線後の整備では他のE31形と同様に「L字状」の塗装に改められています。
これにより、旧型ともいえる「I字状」の塗装を維持していたE31形が消滅しました。
E31形の避雷器の色について
最後に避雷器の色について紹介します。
E31形では、白と黒、2種類の避雷器がありました。
- E31…避雷器 白
- E32…避雷器 黒
- E33…避雷器 白
- E34…避雷器 黒
こちらも最晩年の仕様ということでご理解いただければと思います。
2004年~2005年時点でのE32号機とE34号機の避雷器の色は白色であり、その変更のタイミングは定かではありません。
E32号機の変更時期について
E32号機の避雷器塗装変更は、2006年8月~12月頃のいずれかの時期にて行われています。
E34号機の変更時期について
E34号機の避雷器塗装変更は、2006年8月~9月のいずれかの時期にて行われています。
E31形大井川鐵道譲渡後の避雷器
大井川鐵道譲渡後に、E32号機とE34号機の避雷器は再び白色に改められています。
E34号機の黒塗装が一部残ったような状態を見る限り、黒塗装を落としたようにも見受けられます。
また、2015年時点の営業運行デビュー前は白色に塗装を改めたのみで西武時代と同様の避雷器を装備しているように見えます。
しかし、E33号機は後年になって背の低いタイプのものに交換されているようです。
重連運用時では高低差を比較しやすく、特徴的な見た目となります。
おわりに:西武E31形・トム301形、実車の特徴6選
以上、E31形とトム301形の特徴について大きく6つの差異を紹介しました。
個人的な趣味の記録ですので、追える範囲がどうしても限られてしまうのが悔しいところでした。
この他にもいろいろな差異があるものと思いますので、お気づきの方はお知らせ頂けると嬉しく思います。
ここまでの内容を踏まえて、最後にTwitterのクイズを紹介します。
ぜひ、当記事の内容を参照して当ててみてくださいね。
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