ダイヤ乱れ発生!西武鉄道の折り返し運転について

レポート
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2020年8月14日は、西武新宿線で人身事故が発生してダイヤが乱れました。

列車の運休や行先変更など、運休区間以外の折り返し運転も実施し、普段では見られない行き先表示も見られましたが、西武鉄道ではダイヤ乱れの際にどのような対応(運転整理)を行うのでしょうか?
過去の事例をもとに振り返ってみます。

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ダイヤ乱れ発生時の西武線の動き

2020/8/14 【見合わせ区間:田無~東村山】

今回の輸送障害発生時刻は15:41となっております。

第一報としては、乗務員・駅係員から指令への報告が行われ、
近隣線区の抑止の要否や、見込みの再開時刻の決定
(初報で、駅なら50分後で出す、駅間なら60分後で出す、というもの ※あくまで目安)
を判断しているものと思います。

輸送障害発生時は、特に現場は大大混乱でしょう。
その中でも、こうして9分で情報発信までに至ることの出来る体制は、
今は当たり前になりつつあるものの、利用者目線で非常に素晴らしいものだと感じます。

見合わせ区間については、上記公式Twitterの通り「田無~東村山」であり
これは裏を返せば、西武新宿~田無と東村山~本川越は運転しているということになります。

西武鉄道では輸送障害発生時に、こういった折り返し運転を頻繁に実施します。
これは特に現場の職員さん方の並々ならぬ努力によって支えられているものと推察されますが、
動かない線区を全て一律に止めるのではなく、
動かせる区間は可能な限り動かすというスタンス、
これも利用者目線で考えれば非常にありがたいものです。

頻繁に折り返し運転を行っている西武鉄道ですが、
他の鉄道会社でしばしば聞かれる乗務員がいないので発車できないという事象も、
殆ど聞かれない印象です。
これは、そもそもの乗務員の仕業や運輸区・車掌区の考え方の要素も大きいと思いますが、
こちらも利用者目線から見れば、西武に軍配アリと思わせる要素でもあります。


では、当日の30000系の姿をご紹介します。

30106Fによる上り急行電車、東村山行き

こちらが当日運転された、区間運転の折り返し列車の姿となります。
現場、花小金井駅から見ると下り方は東村山での折り返し、上り方は田無での折り返しということで
普段はなかなか見られない行き先を掲示して走行する電車が見られるということになります。

これは、我々鉄道ファンからすると、希少性の高い姿であり、
是非ともカメラに収めて”コレクション”の一部としたくなってしまうものですが、
(実際にそうしていますが)
裏側で起こっている忙しいやり取りの色々を想像すると、どこか引け目を感じてしまうのも事実です。

38102Fによる各駅停車東村山行き

この日は、東村山駅での折り返しということで
東村山到着後は、すべての電車が本川越行きとして運転されているようでした。

17時頃には現場も復旧し、区間運転は解除となっています。



では、ここからは過去のダイヤ乱れ時の対応を振り返ってみます。


2020/1/30 【見合わせ区間:西武有楽町線全線】

この日は氷川台駅での車両故障により地下鉄方面へのダイヤに乱れが発生していました。


この時は、ダイヤが平復するまで相当の時間を要していましたが
地下鉄直通電車は運休、もしくは行き先を西武線池袋行きとして変更することで
ダイヤを維持している様子が見て取れました。

直通運転によりシームレスな移動が実現したという利便性を享受する一方、
遠い地で起こってしまった輸送障害が西武線にも影響してしまう、
仕方のない事だと頭では承知しているのですが、
なかなかもどかしい思いをする事もあります。


この時は、はっきりと運転再開について「未定」とアナウンスしています。

他社線も絡んだ事象で車両故障ということもあり、致し方ない事なのですが
第一項で触れた「9分で簡潔な情報提供」の感覚からすると
地下直通は全て見合わせ、かつ、再開時刻が未定というのは、
やはりどこか不安な要素が大きいものに感じます。


2012/8/5 【見合わせ区間:西武新宿~所沢・拝島線等】


日付は飛んで8年前、花小金井駅での人身事故によるダイヤ乱れ。
随分前の事象となりますが、冒頭で触れたように同じ花小金井駅の人身事故でも
見合わせ区間が多岐に渡っているのが特徴です。


  • 花小金井駅で人身事故
    • 2020年…田無~東村山で見合わせ、他の区間は折り返し運転
    • 2012年…西武新宿~所沢、拝島線・多摩湖線も見合わせ、所沢~本川越で折り返し運転


これは、発生時刻が夕方通勤時間帯ということで
多くの電車が運行し、多くの乗客が利用していることから
細切れに運転を継続することが逆に混乱を引き起こしてしまう可能性があった為ではないでしょうか。


乗客が折り返し駅において滞留してしまうのは、
更なる混乱や、再開後の遅延増大を招きかねません。


また、昼間のパターンダイヤ運行時と異なり
通勤時間帯では、優等列車や有料列車の多頻度運転も行われており、
下手に動かしてしまうと、車両運用や乗務員都合の兼ね合いもあり
ダイヤ平復までに要する時間が増大してしまうのを防ぐ為とも考えられます。


輸送障害時に折り返し運転を頻繁に行う西武鉄道ですが
通勤時間帯など、多くの電車が運転している時間帯は、
全線もしくは広い範囲で運転を見合わせる場合もあります。


2012/8/5 38111Fによる上り各停上石神井行き

当日は、ナイターダイヤで運転されており、
西武球場前からの直通西武新宿行きも運転されていました。

しかし、ダイヤ乱れに伴い、直通区間を上石神井までに短縮。
西武球場前発の、各停上石神井行きが運転されています。



2013/9/26 【見合わせ区間:西武新宿~所沢・拝島線】


こちらも、夕通対での人身事故。
偶然にも、この時は西武新宿から下り特急に乗り合わせており
レッドアロー乗車中に運転見合わせの一報を知ることになりました。



乗車していた小江戸号本川越行きは、所沢止まりに変更されています。
運転見合わせ区間は西武新宿~所沢間ですが
別途料金を収受する列車については、
ダイヤ乱れ時の運用は煩雑になるということなのでしょう、
所沢以遠ではありますが、区間運休となっています。


特急料金については、上記のように
狭山市・本川越までの特急券については払い戻し、
所沢までの特急券については有効とみなされる旨、案内がありました。


折角なので、ちょっと細かいですが
西武鉄道の旅客営業規則を見てみましょう。

https://www.seiburailway.jp/osaka_ryokakueigyoukisoku.pdf


第290条を引用しますと、次のように記載されています。

第5款 運行不能および遅延
(特急料金の払いもどし)
第 290 条 特急券を所持する旅客は、次の各号の1に該当する場合は、その特急料金の全額の払いもどしを請求することができる。
(1)運輸上の支障その他西武の責めに帰する事由によって指定された特急列車の全部、または乗車後その一部を乗車することができなくなったとき。
(2)特急列車の運行不能または遅延のため第282条の規定によって発駅まで無賃送還の取扱いを受けたとき。
(3)特急列車がその出発時刻に1時間以上遅延したため当該列車の利用を取止めたときまたは、到着時刻に1時間以上遅延したとき。
(4)前条の規定により他の特急列車に乗車したとき。



こちらの290条の(1)を今回のケースに当てはめると、
所沢までは運転されているので適用外、所沢以遠は290条の(1)が適用されるという解釈となるのでしょう。
「西武の責め」となるかは、人身事故では当てはまらない気もするのですが、
「運輸上の支障」という点にフォーカスすれば納得は出来るものです。



2014/5/15 【見合わせ区間:小川~東村山】


この日は国分寺線で人身事故が発生しました。

国分寺線は、国分寺駅を起点とする東村山駅までの5駅の区間を走る支線ですが
こういった支線においても、折り返し設備があれば折り返し運転の実績があります。



支障区間が小川~東村山間である為、
国分寺~小川間については運転を継続しています。

小川駅の配線上、国分寺駅へ折り返し運転が出来る為ですが
小川まで出ることで西武拝島線への接続も可能となります。



国分寺からは多摩湖線も出ているので、
多摩湖線で萩山まで出ればう回路は成立するのですが
国分寺線6両分の輸送量を、4両編成の多摩湖線に押し込んだのでは混乱は必至です。

この時の国分寺からの小川行きの運転は、
非常に柔軟な輸送方法であると感心してしまいました。


当時、通勤で中央線→国分寺~東村山~久米川を利用していたのですが
その節は非常にお世話になりました、無事家に到着することが出来ました。
ありがとうございました。

2015/9/3 【見合わせ区間:西武新宿~上石神井】


最後は少々番外編です。
当日は西武新宿線にて人身事故が発生、一部区間で折り返し運転が発生していました。


23時頃の西武新宿駅では、運転は再開されたものの
ダイヤの乱れは継続しており、発車案内には次のような表示が出ていました。


下りの鷺ノ宮行きは、2011年の震災節電ダイヤで見られたかと思いますが
実際に運転された姿を見たことはありませんでした。


これはと思い、ホームに向かい電車に乗車すると…


列車情報は「サギノミヤ」と見えますが、拝島行きとして運転される旨放送がありました。

このあたりの詳しい事情は存じ上げませんが、
遅れが発生しているため、鷺ノ宮までは便宜上鷺ノ宮行きとして運転して、
鷺ノ宮場面で、適宜、列車番号を振り返るような扱いをしているようでした。


輸送障害の裏側では、運転再開がゴールではなく、
このように遅れ時分の吸収を絶えず行い、ダイヤを平常に戻していくのでしょう。
利用者からは、一見では見えにくい努力を垣間見た気がしました。


まとめ

月並みな言葉ですが、西武鉄道の折り返し運転って結構頑張ってるのでは?
ということに尽きます。

ただ、場合によっては出来ない事もあるし、
出来ない場合は相応の理由もある
(だろう)ということで
私自身の理解も深まりました。

西武鉄道の輸送に携わる皆さま、いつもありがとうざいます。
日々の安全・安心、安定輸送を願ってやみません。

利用する側の我々も、どのような傾向があるかを事前に把握しておくと
立ち行かなくなった際に、随分と穏やかな心持ちでいられるものです。

もし電車が止まってしまった場合は
この記事を読んで、暇つぶしにしてみるのもいかがでしょうか。

それでは、ご覧くださいましてありがとうございました。

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